瓦屋根が雨漏りする原因|プロが見分ける劣化サインと正しい対処法
投稿日:2025.7.24 更新日:2025.7.24

瓦屋根は耐久性が高く、メンテナンス次第で何十年も持つとされています。
しかし、「瓦屋根は頑丈だから雨漏りしない」と安易に考えていると、思わぬ雨漏り被害に見舞われることもあるでしょう。
この記事では、プロが教える瓦屋根の雨漏り原因と、見落としがちな劣化サイン、そして正しい対処法について詳しく解説します。大切な住まいを守るためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
大前提:瓦屋根の雨漏りは「瓦自体」が直接の原因ではない?
瓦が割れていたりズレていたりすると、誰もが雨漏りを心配するでしょう。しかし、実はその瓦自体が雨漏りの直接的な原因となることは少ないことをご存知でしょうか。
瓦は非常に頑丈で水を弾くため、瓦そのものが割れたりズレたりしても、すぐに雨漏りに直結することは少ないです。雨漏りの原因の多くは、瓦の下に隠れている建材の劣化や、瓦の隙間を塞ぐ部分の不具合です。
つまり、瓦に少しのヒビが入っただけでは雨漏りしないことが多く、その裏で密かに劣化が進んでいるケースがほとんどです。この事実を知ることが、雨漏りの早期発見と適切な対策につながります。
▶︎雨漏りのおもな原因とは?雨漏りの修理事例もご紹介します!
瓦屋根が雨を防ぐ「二重構造」の仕組み
なぜ瓦が破損してもすぐに雨漏りしないのか、その答えは瓦屋根の構造にあります。瓦屋根は、雨水を防ぐための「二重構造」になっているからです。瓦屋根は「瓦」と「防水シート」による二重構造で雨水の浸入を防いでいます。
瓦は建物の外観を美しく保ち、雨水の大半を遮断する役割を担います。しかし、風向きや雨の量によっては、瓦の隙間から雨水が浸入することがあります。
その浸入した雨水を最後に受け止めて下地材を保護するのが、瓦の下に敷かれた防水シート(ルーフィング)です。
この二重構造が、瓦屋根の優れた防水性能を支えているのです。
▶︎見えないけれどとても重要!屋根のルーフィングについて解説します!
瓦屋根の雨漏りを引き起こす7つの原因
雨漏りの原因は一つではありません。表面の瓦だけでなく、その下にある見えない部分の劣化が原因となっているケースがほとんどです。
ここでは、特に多い7つの原因について解説します。
原因①:防水シート(ルーフィング)の経年劣化・損傷
瓦の下に隠れているため普段は見えませんが、防水シートは雨漏りを防ぐ上で最も重要な役割を担っています。この防水シートが劣化してしまうと、雨漏りが始まります。
瓦の下に隠れている防水シートは、瓦の隙間から浸入した雨水から下地を守る最後の砦です。新築から20~30年が経過すると、防水シート自体も劣化が進み、ひび割れや破れが生じることがあります。
瓦のズレや割れがなくても、この防水シートが劣化していると、雨水が直接屋根下地に浸入し、雨漏りを引き起こします。防水シートは目視では確認できないため、専門家による診断が不可欠です。
原因②:瓦の「割れ」「ズレ」「欠け」
瓦自体の破損は、雨漏りの直接的な原因ではないと説明しましたが、これは雨漏りの第一歩となる重要なサインです。
瓦の破損は、防水シートの寿命を縮める大きな原因となります。瓦は頑丈ですが、強風で飛んできたものや地震の揺れによって割れたり、何らかの衝撃で欠けたりすることがあります。
また、瓦を固定している釘が錆びたり、漆喰が劣化したりすると瓦がズレてしまい、隙間が生じます。
この隙間から雨水が大量に浸入し、防水シートの寿命を縮めたり、下地を傷めたりする原因となります。瓦の割れやズレは、雨漏りにつながる最初の危険信号と言えるでしょう。
原因③:棟瓦(むねがわら)を支える「漆喰(しっくい)」の劣化
屋根の頂上にある棟瓦は、瓦屋根の顔とも言える部分です。この棟瓦を固定している白い漆喰が劣化すると、雨漏りのリスクが格段に高まります。
棟瓦とは、屋根の頂上部分にある瓦のことです。この棟瓦は、下地と瓦の間を漆喰で固定しています。漆喰は紫外線や雨風にさらされると徐々に劣化し、ひび割れや剥がれが生じます。
漆喰が劣化すると、雨水が棟瓦の内部に浸入しやすくなり、雨漏りの原因となるほか、棟瓦自体が不安定になって強風で飛散するリスクも高まります。
漆喰のひび割れは、雨漏りのサインとして特に見つけやすい部分です。
原因④:雨水の通り道「谷板金」のサビ・穴あき
屋根の谷部分は、二つの屋根面から集まる雨水が集中して流れるため、特に雨漏りが起きやすい箇所です。
この部分に使われている谷板金に劣化が見られると、雨漏りは時間の問題となります。谷板金とは、二つの屋根面が交わる谷部分に取り付けられている金属製の板です。
この部分は雨水が集中して流れるため、屋根の中でも特に負担が大きい箇所です。経年により塗膜が剥がれて谷板金が錆びたり、腐食によって穴が開いたりすると、その部分から直接雨水が下地に浸入し、雨漏りを引き起こします。
谷板金の錆や変色は、雨漏りの危険が迫っているサインとして注意が必要です。
原因⑤:壁との接合部「雨押え(あまおさえ)」の劣化
屋根と外壁が接する部分は、構造上、雨水が浸入しやすい弱点です。この部分に設置されている雨押え板金が劣化すると、雨漏りの原因となります。
雨押えとは、屋根と外壁が接する部分に取り付けられる板金のことを指します。この部分も谷板金と同様に、雨水が集中して流れやすい箇所です。
雨押え板金が経年劣化で錆びたり、板金を固定している釘が浮いたりすると、そこから雨水が浸入してしまいます。
また、板金と壁の隙間を埋めているコーキング材が劣化してひび割れることも、雨漏りの大きな原因となります。
原因⑥:屋根下地(野地板)の腐食
防水シートが劣化し、雨水が下地まで到達すると、次に被害を受けるのが野地板です。この段階になると、雨漏りはかなり深刻な状態になっていると言えます。
屋根下地(野地板)は、瓦と防水シートを支える重要な構造体です。防水シートが劣化して雨水が浸入すると、まずこの野地板が雨水にさらされます。野地板が常に湿った状態になると、木材が腐食して強度が低下します。
野地板の腐食が広範囲に及ぶと、屋根全体の耐久性が失われ、最悪の場合、屋根の崩落につながる危険性もあります。この段階に至ると、屋根全体の大規模な修理が必要となります。
原因⑦:過去の工事での「施工不良」
雨漏りの原因は、必ずしも経年劣化だけではありません。
特に築年数が浅い建物で雨漏りが発生した場合、過去の工事における施工不良が原因である可能性も考慮する必要があります。雨漏りの原因には、過去に行われた屋根工事の施工不良も少なくありません。
例えば、防水シートの重ね代が適切でなかったり、瓦の固定が不十分だったり、雨仕舞いが正しく行われていなかったりするケースです。特に、新築から数年で雨漏りが発生した場合は、施工不良の可能性が高いと言えます。
信頼できる業者に依頼することが、長期的に見て雨漏りリスクを減らす最も重要な対策です。
瓦屋根の雨漏りを放置する3つの深刻なリスク
「少しの雨漏りだから大丈夫だろう」と安易に考えていませんか?雨漏りを放置すると、修理費用が高額になるだけでなく、建物の寿命や住人の健康にも深刻な悪影響を及ぼします。
リスク1:構造躯体(柱や梁)の腐食と耐震性の低下
雨漏りを放置することは、建物の骨組みを蝕むことに他なりません。
雨水が構造躯体にまで達すると、建物の根幹に関わる問題に発展します。雨漏りを放置すると、雨水は屋根下地を通り越して、建物の柱や梁といった構造躯体(骨組み)にまで達します。
木材が水分を含むと腐食が進み、建物の構造的な強度が著しく低下します。これは、地震が発生した際に建物の倒壊リスクを高めることに直結し、住人の命に関わる重大な問題となります。
リスク2:カビの発生による健康被害
雨漏りは、屋根や壁の内部を湿らせ、カビが繁殖しやすい環境を作り出します。見た目の問題だけでなく、カビは健康にも悪影響を及ぼします。
雨水が屋根裏や天井に浸入すると、湿度が高まり、カビが発生しやすい環境になります。カビは見た目が不快なだけでなく、胞子が空気中に飛散することで、アレルギー性鼻炎や喘息などの健康被害を引き起こす可能性があります。
特に小さなお子様や高齢者がいるご家庭では、注意が必要です。
リスク3:シロアリの発生
シロアリは湿気を好む生物です。雨漏りによってできた湿った木材は、シロアリにとって絶好の餌場となり、深刻な被害を引き起こします。
シロアリは湿った木材を好むため、雨漏りによって常に濡れている屋根下地や構造躯体は、シロアリにとって格好の棲み処となります。
シロアリの被害は建物の耐久性をさらに低下させ、大規模な修繕が必要となる原因となります。
雨漏りを発見したら、シロアリ被害の兆候がないかどうかも併せて確認することが大切です。
瓦屋根の修理方法と費用相場
雨漏りの原因や被害の程度によって、修理方法は大きく異なります。ここでは、主な修理方法とその費用相場についてご紹介します。
部分的な補修
雨漏りの原因が特定できており、被害が軽微な場合は、部分的な補修で対応できることがあります。
瓦の割れやズレ、漆喰の劣化など、原因が限定的で軽微な場合は、部分的な補修で対応できます。割れた瓦の差し替えや漆喰の詰め直し、コーキングの打ち替えなどが主な作業です。
費用相場は数万円~10万円程度と比較的安価に収まることが多いです。
ただし、応急処置で済ませると、根本的な解決にならない場合があるため、専門家の判断を仰ぐことが重要です。
板金部分の交換
谷板金や雨押え板金のサビや腐食が雨漏りの原因である場合、その部分の板金を交換する必要があります。
谷板金や雨押え板金の劣化や腐食が原因の場合は、その部分の板金を新しいものに交換します。雨水の流れを正しく確保するために、周辺の瓦を一度外して作業を行うことが多いです。
費用相場は板金の交換箇所や面積によって変動しますが、一般的には10万円~30万円程度が目安となります。
屋根全体のメンテナンス
防水シートや屋根下地など、屋根の広範囲にわたって劣化や損傷が見られる場合、部分的な補修では対処できません。
その場合は、屋根全体のメンテナンスを検討する必要があります。防水シートの劣化や屋根下地の腐食が広範囲に及んでいる場合は、屋根全体のメンテナンスが必要です。
これには、既存の瓦や防水シートをすべて撤去し、新しいものに交換する「葺き替え工事」、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる「カバー工法」などがあります。
費用は大規模になるため、数十万円から数百万円と高額になります。
▶︎瓦屋根が地震に弱い理由とは?瓦葺き替え工事についても解説!
まとめ:瓦屋根の雨漏りは原因の特定が最重要!まずは専門家にご相談を
瓦屋根の雨漏りは、表面の瓦だけでなく、その下にある防水シートや下地材の劣化が原因であることがほとんどです。目視で確認できる劣化サインを見つけたら、放置せずに早急に専門家へ相談することが大切です。
雨漏りを放置すると、構造躯体の腐食やシロアリ被害など、さらなる被害が拡大し、最終的に高額な修理費用が必要になります。
まずは信頼できる業者に診断を依頼し、適切な原因特定と修理を行うことで、大切な住まいを長く守りましょう。
瓦屋根の雨漏りが心配な方は、ぜひ富士宮屋根工事店へご相談ください。雨漏りのリスクがないかどうか、無料で調査いたします。
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